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J.L.モラー(J.L.Moller)/ ニールス・O・モラー(N.O.Moller) ダイニングチェアのメンテナンス

J.L.モラー(J.L.Moller) / ニールス・O・モラー(N.O.Moller)ダイニングチェアのメンテナンス風景をご紹介します。
木部の修理や生地の張替えなど、メンテナンスの工程や目には見えない部分のこだわりなどをご覧頂けます。

まずは、こちらがメンテナンス後の仕上がった状態です。

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〜生地剥がし〜

はじめに、張られている生地を剥がします。
モラーの椅子は特に、この作業が最も大変と言ってもいいほど時間と体力を使います。
その理由は、打ち込まれているタッカーの芯は、隅々まで全て丁寧に取り除いているからです。
過去に何度か張り替えられている場合は、古い生地の上からそのまま新しい生地が張られていたり、
生地だけカットして剥がされ、古いタッカーの芯はそのままの状態で残っていることが多いです。
そのような古いタッカーの芯も全て取り除いて綺麗な状態にします。
(芯が折れてどうしても取り除けないものは、表に飛び出さないように木の中に打ち込みます。)

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一番上の革を剥がすと、その下から過去に張られた革とタッカーの芯や釘が出てきました。
左の写真は、過去の2回分が出てきました…

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麻のウェービングテープを止める為に大量に打ち込まれたタッカーの芯も全て取り除きます。

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このようにこびり付いた古いウレタンや綿も、綺麗に取り除きます。

新しい生地を張れば全て隠れてしまうので、上記の写真と同じように、
古い生地やタッカーの芯をそのまま残して上から新しい生地を張ることもできますが、
見えない部分まで丁寧にこだわって、綺麗に仕上げております。

 

〜木部接合の修理〜

接合部分の緩みやガタつきがある場合は、事前に修理を行います。
緩みがある箇所はできる限り分解して、古い接着剤を取り除いて再度固定します。
古い接着剤が残っていると、新しい接着剤が効かずに強度も半減してしまいます。

接着剤が効いている箇所は、無理に分解しようとすると木が折れてしまう可能性があるので、
1箇所ずつ状態を確認しながら、慎重に分解してきます。

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接合部分が完全に緩んでおり、手で動かしただけでこのような隙間ができました。

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状態によって、このように分解できる箇所とできない箇所が出てきます。

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様々な種類のクランプという工具を使用して、しっかりと再固定します。

接合部分が緩んでしまう原因として、木が痩せて隙間ができてしまうということもあります。
そのような場合は、緩みができないように隙間に木を足してから再固定します。

分解ができない箇所は、隙間から接着剤を流し込むなどで、できる限りの補強を行います。

〜木部再仕上げ〜

丁寧に研磨を行い、着色後にオイルなどで仕上げを行います。
全ての傷を落とそうとむやみに削ると、形やデザインが変わってしまいますので、
無垢材の凹みはできる限り戻した上で削るなど、オリジナルの形を保ちつつ、
できる限り傷やシミなどを落とします。
木部の再仕上げは、下記より様々な家具のメンテナンスをご覧頂けます。
→https://www.deco-boco.com/clean-repair

接合修理、木部再仕上げ完了の状態
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〜布バネ・ウレタン交換〜

ビンテージのものには通常、上記の写真のような格子状の麻ベルトが張られていますが、
あえてウェービングベルトなどは使用せずに、下記写真の布バネを選んで使用しています。

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布バネは荷重を広い面で支えられることで、座った際の本体への負荷が少なくなります。
布バネ自体も耐久性のある素材です。
座り心地は、柔らかすぎず硬すぎない伸縮性を持っている為、快適な座り心地を再現できます。

また素材自体が薄いので、全体としての厚みが出ないという良い点もあります。
このように布バネは、素材や椅子の耐久性、見た目など、全てをカバーしてくれます。

布バネの上に、硬めのチップウレタンと密度の高い良質なラバーウレタンを重ねます。
硬さの違うウレタンの2層構造で、快適な座り心地となります。

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布バネの上にチップウレタンを乗せている状態

 

最後に、生地や本革を張ってメンテナンス完了です。
完成後の見た目だけではなく、構造面や目に見えない部分まで丁寧にメンテナンスを行い、
より長くご使用頂けるように、オリジナル以上のクオリティを目指しています。

■メンテナンス前
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■メンテナンス後
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その他モラーのテーブルや椅子のメンテナンス・完成後のイメージは、下記よりご覧頂けます。
→https://www.deco-boco.com/type/vintage/genre/designers-item/jl-moller-no-moller